今日は休みだったので服を買いに出かけたが一着も買えなかった!欲しいと思う服はもう既に似たようなやつを持っているということに気が付いたからである。しかし既に手は打ってある。こんなこともあろうかと、「せっかく来たのに無駄足かよ!」と自分を責めることのないよう、あらかじめ用足しを準備してきたのである。
それがこれだっ。じゃじゃーん(箱から靴を取り出す) この靴は去年かおととし、ここの店で買った靴でキャメル色の10cmヒールのアンティーク調革靴である。もちろん可愛さはお墨付きだ(私の)。そして私はこの靴を買ってから一回しか外に履いて行っていない、なぜなら、当時そして今も私の足のサイズは一貫して23.5であるにもかかわらず、当時はなぜだか、まずは23センチを買い、履いてるうちにジャストサイズに拡張していくということが私の中で決まっており、その方法で多くの靴を履きこなしていたわけだがこの靴だけは革が厚くたくましく、思うように調教が進まずそのうち私の足の指の骨が悲鳴をあげるような気がして、一時棚上げしていたのを、最近では諦めて箱にしまいっぱなしだった物である。
そうこれを、今日こそ靴屋にもって行き、たまに靴買うときにお世話になることも多い、あの『ぎゅーっと靴の幅広げる木型』でもって、ぐうの音も出ないほどに、サイズを改造してやるのだ。
そなたの戦いぶり、見事であった。しかし今日からはそなたもわらわの奴隷、晴れてわらわのコレクションの一つとなるのだ!フハハハハハ!
というわけでリーガルのお姉さんとこにその靴を持っていったのだが、その場でパパッと広げてくれるのかと思いきや、「ではしっかり『かけさせて』いただきます」ので一週間ほど後に引き取りに来るように、とのこと。もともと履いていない靴なので私は全く構わないのだが、一週間も外泊をすることになるとは、あの靴にしてみれば思いもよらないアバンチュールである。
私の手に渡ってから一年余り、狭い箱の中でただ我と我が身だけと寄り添い、過ごしてきたキャメル嬢。ひょんなことから故郷に連れ戻され、数日をそこで過ごすことになったわけだが、彼女の時間感覚にして十数年ぶりに訪れた郷里は、依然とは全く違う印象を彼女に与えた。居並ぶ靴の顔も、皆知らない者ばかり…不安と期待を胸に、彼女は暗い倉庫にたたずむのやも知れない…いいなぁ…。私も旅行したい。
そうだ、少しの間だけ、私と靴の肉体と精神が入れ替わったらどうだろう。そう、チャリオッツレクイエムだ。わたしはあの靴になって他の靴たちと言葉を交わし、ささやかな冒険に満ちた数日間を過ごし、そして一週間後に引き取りに来てもらって、そこで元の肉体に戻るのだ!そうだそうしよう!
そんなわけで今日からしばらく、私の精神はキャメルの靴に宿っており、私の肉体にはキャメルの靴の精神が宿っています…心配なのは明日の私の仕事だ。見た目は普通の人間でも、なにせ中身が靴だからな…ちゃんとやってくれるといいけど。